Smoke Pollution Caused by Inbound Tourism 001

Inbound tourists were observed smoking at Sarusawa Pond, despite its designation as a non-smoking area. November 28, Nara. (©Sankei by Norihiro Akiyama)

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新型コロナウイルスの感染対策が緩和され、外国人の訪日旅行が活気づく中、観光地を中心に喫煙ルールを巡る問題が再燃している。国内では近年、多くのエリアで路上喫煙禁止や分煙が徹底されてきたが、訪日外国人への周知はいまひとつで、各地で国内を訪れた観光客による喫煙のルール違反やトラブルが後を絶たない。

 

 

日本語通じない…注意もできず

 

紅葉シーズンまっただ中の11月下旬、奈良市の奈良公園には多くの外国人観光客が訪れ、シカと戯れていた。道の片隅には吸い殻が多く捨てられ、日本では一般的に販売されていない海外の銘柄も複数あった。

 

奈良市では平成21年から奈良公園の周辺などを路上喫煙禁止地域に指定し、職員の是正指導に従わない場合は千円の過料を科している。だが、同地域内で路上喫煙していた中国人旅行客の40代男性は「ここが禁煙だと知らなかった。地元だと屋外は大体吸えるので、その感覚で吸ってしまった」と話す。

 

こうしたルールの認識不足は外国人に限った話ではないが、奈良公園周辺でごみ拾い活動をしている「奈良公園ゴミゼロプロジェクト」の安達研事務局長(64)は、「喫煙者に注意しようにも言語が通じなかったりする。現場での周知には限界がある」と訴える。

 

 

違反者に占める外国人、コロナ前の水準に

 

外国人観光客と喫煙ルールを巡る問題は、各地で起きている。

 

6つのエリアを路上喫煙禁止地区に指定している大阪市では、コロナ前の令和元年度には違反者のうち外国人が占める割合は16%にのぼった。感染拡大下の4年度には2%に下がったものの、今年度はコロナ前の水準に近づきつつあるという。

 

JR奈良駅前に設置された、路上喫煙禁止を伝える看板=11月28日、奈良市(秋山紀浩撮影)

 

「地球の歩き方」が展開する訪日旅行情報サイト「GOOD LUCK TRIP」が海外在住の891人を対象に5月に実施した「日本で不便に思うこと」の調査(複数回答)では、「喫煙できる場所の少なさ・分かりにくさ」が14・4%で8位にランクイン。喫煙者(237人)に限ると44・3%に上った。調査をまとめた地球の歩き方デジタル事業室の山崎宏之さんは「喫煙は国によって法規制やマナーが異なり、不慣れな旅先の国で戸惑っていることがうかがえる」と分析する。

 

さらに、日本のなかでもエリアによってルールが異なることが、喫煙の可否をより分かりにくくしているとみられる。

 

 

多言語ポスターや喫煙場所マップ

 

行政側もただ手をこまねいているわけではない。大阪市では、路上喫煙禁止地区を示すポスターの多言語化を進めるとともに、巡回員に多言語表記のカードを持たせて指導を強化。同市は2025年大阪・関西万博に向けて市内全域を路上喫煙禁止にするとしており、分煙のため市内に喫煙所を新設する。

 

多くの外国人が訪れる東京都渋谷区では、区から委託された民間警備会社の啓発員約20人が毎日巡回し、外国人観光客らに路上喫煙できないことを説明。言葉が通じなくても吸える場所が分かるよう、啓発ポスターに2次元コードを付け、写真で読み取ると喫煙場所をまとめたマップを閲覧できるようにしている。

 

奈良市は今後、路面表示や看板といった外国人観光客に対して効果的な周知方法を検討するとしている。

 

山崎さんは「地域によって異なる喫煙ルールを、外国人観光客が全て把握するのは困難だ」と指摘。その上で、「喫煙可能な店には喫煙者が集まるため、そうした店に情報発信をお願いできれば効率的だ。多言語表示も進めつつ、将来的には地域を横断して日本国内の喫煙可能な場所の情報を伝えるアプリやウェブサイトの整備が望まれる」とした。

 

筆者:秋山紀浩(産経新聞)

 

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